アートゾーン神楽岡美芸短信

ギャラリストが様々な角度から日記風に伝える展示会通信です。

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7/19(日) 第77回日本版画協会展受賞者紹介⑦ 三宅由里子 

 日本版画協会展受賞作家展は版画作家の登竜門として高い評価を得ています。

 その協会展は毎年4月に東京都立美術館で開催されていますが、今年の受賞者は12名でした。

 弊店では今年から受賞者の作品を展示することになり、現在展示中ですが後2日を残すのみとなりました。

 受賞者の作品のレベルは高く、魅力的な作品も多かったのですが後2日残した時点で言えば、来客も少なく残念な結果に終わりそうです。

 来年から再来年にかけて東京都立美術館が大改築されるため、この協会展は来年、再来年と京都市立美術館で開催されることになりました。

 しかし、今回の弊店での来客実績から推察すれば、京都および関西の人々に日本版画協会展の偉大な実績がほとんど知られていないということです。

 企画展として開催したのですがまったく、単なる素人のグループ展位にしか思われなかったのでしょう。

 版画の世界で言えば、文学の登竜門である芥川賞や直木賞であるのですが、そのことが全く認知されていないことが判りました。

 来年は京都で日本版画協会展が行われるので、これからこの協会展の実績とそこで受賞する意味を積極的にアピールしていかなくてはならないと強く思いました。

 さて、大いなる反省の後、今日当ギャラリーを訊ねてくれた受賞作家三宅由里子さんを紹介します。

 ◎三宅由里子 B部門奨励賞受賞

 彼女は愛知淑徳大学文学部卒業後、さらに希望の愛知県立芸術大学美術学部デザイン科に編入学しました。

 しかし2年目から油科に転科し銅版画をはじめる事になり銅版画に魅せられてしまったそうです。

 このようにかなり変わった学歴ををもつ彼女はデザイン的センスももちろん持っておりWEB上でデザインが出来るフレッシュというソフトも使えるとのことです。しかし今は銅版画の手業に魅力を感じておられるようです。

 彼女の作品はデザインと対極の銅版画と言うテクニックを使い、作り出すイメージもデザインと対極のものでその感性に驚かざる得ません。


 彼女は ”生まれいずるもの” の神秘的な生命体を主たるテーマにして描いています。

 いろんな動物が受精し生命が宿り生育していく過程を創造力で補いながら描いていきます。

 グロテスクな形をしているのですが、しかし成長していく胎児の姿をキュートに力強く描いています。

OMOKAGE三宅縮小

 彼女は現在、動物飼育のアルバイトをしているそうです。彼女のテーマにピッタリの職場ではないですか。

 これからも、様々な動物(想像上の動物も含め)の胎児を描き続けたいとのことでした。

 文学的センスもありいずれはシュールな詩画集を作ることを夢見ているとのことです。

 今後が期待できる新人です。

 
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7/18(土) 日本版画協会展受賞作家⑥ その他作家7名の紹介

 今まで紹介した5人の作家は準会員です。

一般公募から選ばれた7名を紹介します。

寺田一行    山口源新人賞受賞
三宅由里子   B部門奨励賞受賞
金キョンソン   版画協会賞受賞
林ジヘ      A部門奨励賞受賞
大坂秩加    立山賞受賞
遠藤美香    新人賞受賞
武藤智佳子   山口源新人賞受賞

 この中から当ギャラリーを訊ねてくれた金キョンソンさんと武藤智佳子さんを紹介しましょう。

 金さんは韓国の美術大学で油彩を学んだ後、多摩美術大学大学院に進学し、現在版画専攻の2年生で、木版をされています。

 版画は日本に来てから始めたようですが絵画の基本をしっかりと学ばれたようで、その力量は並のものではありません。

 幼い頃からバイオリンやピアノを学習されてきたので絵の構想に音楽的センスが入っており、色彩感覚はバロック調のどっしりしたものです。

 抽象的な画面ですが画面の背後からバッハが流れてくるような荘重な画面です。

金the core of縮小

 次に武藤智佳子さんです。

 武藤さんは秋田県出身で農家の一人娘さんと伺いました。

 地元の高校卒業後、多摩美術大学に進学し現在大学院1年生です。

 美術系予備校も行かず現役で多摩美術大学に合格されたようで、受験テクニックに染まっておられず、個性的に4年間を思うままに過し、今回の受賞作品は、90×180cmを横に4枚繋いで1つの作品となる驚くべき大きさの木版作品を出展されました。

 その1枚を今回展示されましたが、イカが浜辺に寝そべっているような作品ですが壮大な拡がりを感じる作品です。

武藤智佳子縮小

 金キョンソンさんも武藤智佳子さんもまだ20代前半ですが、その才気は並のものではありません。
将来が楽しみな学生(作家の卵)です。

期待したいと思います。

 

7/11(土) 日本版画協会展受賞者⑤ 柴田真由美の紹介

 次は5人目、柴田真由美の紹介です。

 the messenger090529柴田DM

 作品のテーマについて柴田真由美は次のように記している。
 
 「私の記憶の中にこめられた、様々な自然界の目映い光と同時に現れる影、また、無機質で単純な物質のフォルムから「想像」という多次元的で自由な流動空間へ解放した時の、その一瞬の輝きやリズムを版画という手段でこの感触を一層明確に意識しながら表現することを追及している。
 プレス機の圧力によって刻まれる凹線の鋭さ、ほんの数秒で表情を刻々と変えるモノタイプのはかなさ、目の眩むような色彩。それらを白い紙に写し取り、その瞬間の美しさを観る者の心に染透るような作品を創りたい。」

 このように光が様々に変化する様子を創造力によって飛躍させ目くるめく世界を生み出しています。
 
そのためにモノタイプやコラグラフ、コラージュなどの版技術を駆使し目くるめく世界を作り出しています。

柴田真由美のプロフィール
1971 生まれ
1997 多摩美術大学大学院修了
2004 京展賞受賞
2005 京都府美術工芸選抜展京都府買上
2009 第77回日本版画協会準会員佳作賞受賞

 

7/10(金) 日本版画協会展受賞作家展④ 宮井麻奈の紹介

 元田久治、斉藤里香、武藤正悟に続き

 宮井麻奈 を紹介します。

宮井麻奈

 宮井麻奈の絵に出てくる少年、少女達は何かけだるく世をすねた様子で目がうつろです。

 この少年もベッドに物憂げに寝そべり焦点の合わない眼差しをしたままで紐をたらしています。あるいは自分の世界にどっぷりと嵌り込んでいるのかもしれません。孤独な少年の眼差しです。

 現代社会は益々混迷してきており、少年少女たちが屈託なく元気に朗らかな表情でおられる状況では残念ながらないようです。

 悩める現代社会にこども達は敏感に反応し、その本質を感じ取っています。

 宮井麻奈は子供たちの代弁者として少年、少女達の内なる悩みを語ってくれているのでしょうか。

 私にはそのように見えるのです。

宮井麻奈のプロフィール
1978 生まれ
2001 第5回高知国際版画トリエンナーレ(01、08賞候補)
2002 東京国際ミニプリント・トリエンナーレ優秀賞受賞
2003 第71回日本版画協会展山口源新人賞受賞
    多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻修了
2009 Heart Art in Tokyo 2009松村秀太郎芸術大賞受賞
    第77回日本版画協会展準会員優秀賞畦地梅太郎賞受賞

7/7(火) 第77回日本版画協会展受賞者③ 武藤正悟 

 現在下記グループ展を行っています。

 7/3(金)~21(火) 第77回日本版画協会展受賞作家展

 今回は武藤正悟の紹介です。

武藤作品 しじま(A)

 武藤正悟は銅版と木版を併用しながら幻想的で目くるめく独特の世界を作り上げてきた、日本版画協会で何度も入選を重ねてきたベテラン作家です。

 数年前までは花のイメージを求めながら、花の痕跡が残らないほど抽象化した作品を制作してきましたが、近年は水中に浮遊する植物や生物群のイメージへと変化してきたように思えます。

 いずれのイメージも大胆なひろがりを持つ画面を展開しておりファンタジックな印象を与えてくれます。

 武藤正悟のプロフィール
1966 生まれ
1990 東京学芸大学D類美術科卒業
1992 東京藝術大学大学院卒業
2003 タイ国際版画・素描画 シルバーコン大学開学60周年記念受賞
2004 第24回カダケス国際小版画展(スペイン)受賞
2005~06 文化庁芸術インターンシップ国内研修員
2009 第77回日本版画協会展準会員最優秀賞受賞

 

 

 

7/4(日) 第77回日本版画協会展受賞者② 斉藤里香

 斉藤里香の紹介です。

Three wishes斉藤里香縮小

 さてこれは何でしょう? ドラネコの尻尾かな! くもの巣も張ってるぞ! くもの巣の上のグレーはなんだ! 

 何か記憶の中にあるいろんなものの断片が紡がれて出来上がった作品のようだ!

 尻尾もくもの巣も風に吹かれて揺らいでいるのかな! 生暖かい匂いもするぞ!

 タイトルを見よう! 「Three wishes」と付いている。 3つの願い!だって!

 彼女の3つの願いは何だろう。 このドラネコの尻尾のようなぶら下がっているものが3つの願いを象徴しているのかな?

 画面は明るく希望の色彩だ! 

 そお! 過去の生暖かい風の匂いや音や色彩が、ある日、脈絡なく蘇ることってありますね。

 斉藤里香は匂いや音や色彩などの過去の思い出をもとに内面の感情を画面にぶつけていきます。

 抽象的な画面構成ではあるけれども、いろんな記憶がくもの巣に絡め取られたようにつながり、皮膚感覚を感じる表情のある画面を創り上げています。

斉藤里香のプロフィール
1977 生まれ
1999 女子美術大学卒業
2000 第68回日本版画協会展山口源新人賞受賞
    第29回現代日本美術展東京近代美術館賞受賞
2001 第2回飛騨高山現代木版画ビエンナーレ優秀賞受賞
    あおもり版画トリエンナーレ2001奨励賞受賞
2002 東京藝術大学大学院修了
    第5会高知国際版画トリエンナーレ展優秀賞受賞
2006 第74回日本版画協会展畦地梅太郎賞受賞
2007 第13回鹿沼市立川上澄生美術館木版画大賞展大賞受賞
2009 第77回日本版画協会展準会員優秀賞F・Y賞受賞



 

 
 

7/4(土) 第77回日本版画協会展受賞者① 元田久治

 元田久治(準会員優秀賞F・F賞受賞)の作品を見てみよう。

元田久治縮小

 昨年中国でオリンピックが開催されたが、この建物はその北京オリンピック会場で、鳥の巣のような形状で話題を呼んだ建物ですね。

 しかし、建物は壊れ廃墟となっています。

 あらゆる建築物は老朽化し廃屋と化す運命にあります。

 廃墟化するのは戦争や大災害による場合が考えられますが、しかし、周りを見渡してみれば、高度成長期に開発されたニュータウンは老朽化しゴーストタウン化しているところもありますし、地方都市の商店街が廃墟化している風景も垣間見えます。

 元田久治は東京都心のあらゆる場所を廃墟にしてきました。

 廃墟化した高層建築物や都心は何か空しく、しかし真っ青な空に見様に美しくさえて見えることもあり、これはまさに滅びの美学でしょうか。

 こんな現代の都市開発がもたらした問題を告発するような作品を元田久治はこれからも作り続けていくのでしょう。

 是非ご覧下さい。

元田久治のプロフィール
1973 生まれ
1999 九州産業大学芸術学部美術学科絵画専攻卒業
    第24回全国大学版画展買上賞受賞
2001 東京藝術大学大学院美術研究科版画専攻修了
    神奈川国際版画トリエンナーレ2001準大賞受賞
2002 第34回ジョール国際美術家シンポジウム最多投票賞受賞
    第70回日本版画協会展協会賞受賞
2003 第11回プリンツ21グランプリ展特選受賞
2009 第77回日本版画協会展準会員優秀賞F・F賞受賞


 次回は斉藤里香です。

7/3(金) 第77回日本版画協会展受賞作家展 新鋭作家の登竜門!!

 今日から下記展示会が始まります。

 7/3(金)~21(火)
第77回日本版画協会展受賞作家展 


 日本版画協会は昭和6年に創設されましたが、その前身は山本鼎や織田一磨などによって大正7年設立された日本創作版画協会です。

 日本創作版画協会と洋風版画会(岡田三郎助など)と無所属の長谷川潔、梅原龍三郎などが合流し総勢43名で日本版画協会を立ち上げました。

 それ以来、1945年の終戦時の混乱期を除き毎年協会展は行われ、今年で77回目の協会展が行われたことになります。

 現在、会員・準会員を含め360名を要する大きな美術団体です。

 版画を主とした美術団体は他に日本板画院がありますが、この団体は棟方志功が発起した団体で創作木版画作家が中心になっています。

 それに対し、日本版画協会は木版に限らず版という媒体を通じて描かれた創作作品を制作する人たちが集まる美術団体といえます。

 この公募展は毎年春に東京都美術館で行われますが、これには抽象、具象を含めあらゆる版種を駆使したコンテンポラリーな作品が毎年1000点を越え応募されます。

 今回、この日本版画協会展で受賞した全作家の受賞作品を中心に紹介します。

 では、次回から受賞作家を順次紹介しましょう。

展示風景2

展示風景1


 

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